寒いとiPadが充電されにくい理由

スマートフォンタブレットをはじめ、あらゆるモバイル機器に搭載されているリチウムイオン電池は、外部温度と密接な関係があります。
一般的に約5℃ ~ 35℃の環境では問題なく充電ができますが、約5℃を下回る寒い環境下は電池に好ましくない影響を及ぼします。

理由 その1:電池容量の減少
電池容量が減少すると、電池の連続使用可能時間が短くなります。
電池は、その使い始めには起電力としてやや高めの電圧を出力し、放電を行うにつれて電圧は徐々に降下します。やがてある電圧を境にその低下の度合いが急激なものとなり、電池を電源として動作していた機器は停止に至ります。リチウムイオン電池は、放電終止電圧を2.5Vとすることが多いです。また、外部温度によって次のような放電曲線に差が生じます。
f:id:shinji629:20190117151959p:plain

理由 その2:内部抵抗の上昇
内部抵抗が上昇すると、取り出し可能な電池電圧が低下します。抵抗とは、内部で化学反応が起こる際、その反応が遅いことを意味します。人間に例えると、寒い環境では、寝起きの際、抵抗してベットから出たくない状況と似ています。
科学的には、アレニウスの式で表現されます。
f:id:shinji629:20190117161133p:plain
反応の速度定数 k は、次の値によって変化します。
A :温度に無関係な定数(頻度因子)
Ea :活性化エネルギー(1molあたり)
R :気体定数
T:絶対温度

T(絶対温度)に着目すると、この値が小さくなるとexp内の負の絶対値が大きくなるため、反応速度定数kも小さくなります。
よって、反応が遅くなります。つまり、抵抗が上昇します。

その他の理由として、粘度なども関係すると言われています。温度が高いと粘度が低く、温度が低いと粘度が高い性質があります。
よって、温度が低いほど粘度が上がります。つまり、移動度が下がり、抵抗上昇につながります。

結論として、寒冷地でiPadを使う際には、なるべく部屋をカリフォルニアのようにあったかくして、充電/使用したほうが良さそうです。
きっとAppleの本社が、ロシアやアラスカだったら、-30℃ぐらいでも使用可能なリチウムイオン電池を搭載してくれたかもしれません。